グループワーク中に、参加者それぞれが別の方向を向いていることに気づいた大学生

グループワークで自分の価値を作る方法|ブルーロックの「主人公感」から考える立ち回り

「ちゃんとやったのに、評価されなかった」。グループワークでそう感じたことがあるなら、原因は作業量ではないかもしれません。同じ課題に向かっていても、その卓にいる全員が回収したいものは違います。

同じ卓にいても、全員ゴールが違う

同じ机を囲んでいるのに、それぞれ違う方向を見ている4人の学生
なんと ユウタが とけいをかくにんしながら はやくかえりたそうに こちらをみている!

グループワークは「共通の課題に全員で取り組む場」に見えます。提出する成果物は確かに一つです。

しかし、そこから各自が回収したいものは共通ではありません。 成果物は手段であって、目的は人によって違う。この前提を持たずに参加すると、「なぜこの人は協力してくれないのか」という誤解が延々と続きます。

大きく4つに分かれます。

タイプ本当に欲しいものよく口にする言葉見分け方
成果型良い評価、良い成果物「もう少し調べたほうがよくない?」締切より前に着手する。基準を上げる提案をする
効率型最小の労力で終わらせること「これくらいで十分でしょ」作業の分割と「どこまでやったら終わりか」を先に決めたがる
承認型誰かに認められること「発表、やろうか?」目立つ工程を取りに行く。裏方の作業を避ける
安全型揉めないこと、浮かないこと「どっちでもいいよ」最後まで意見を出さない。多数派が決まってから乗る

見分けるのは初回の30分です。 役割を決める場面で、誰が何を取りに行ったか。ここに全部出ます。

聞き出す必要はありません。「目的は何ですか」と聞けば建前が返ってくるだけです。宣言ではなく選択を見てください。

ユウタ

正直に言うけどさ、俺は単位さえ来ればそれでいいんだよ。

手を抜きたいんじゃなくて、頑張る場所が今日じゃないだけ。

正しい提案ほど、拒否されることがある

正しいはずの提案をしたのに、相手が真剣な顔で断っている場面
確かに君の提案は正しい。だが断る

ここで、サッカー漫画『ブルーロック』(原作: 金城宗幸、漫画: ノ村優介、講談社)の話を挟みます。第23巻に、この構造がそのまま出てくる場面があるからです。

主人公の潔世一が、チームメイトの雪宮に協力を持ちかけます。自分にパスを出させたほうが点が入る、どう考えてもそのほうが合理的だ、という趣旨の提案です。実際、正しい。

雪宮はこれを断ります。

お前らみたいに利口な人間だけが報われるなら、この世界は間違っている・・・!!

(『ブルーロック』第23巻/原作: 金城宗幸、漫画: ノ村優介、講談社)

潔は面食らいますが、すぐに気づきます。雪宮のゴールは「試合に勝つ」ことではなかった。 敵視している潔に勝ち、自分で点を決めることで、夢を諦めなかった自分の人生を肯定する。それが雪宮の目的でした。

そのゴールを持っている相手に「他人にパスを出したほうが勝てる」と言っても、通るはずがありません。提案が間違っていたのではなく、相手のゴールを取り違えていたわけです。

潔はこのとき働いている力を「主人公感」と呼び、自分の物語を信じて突き動かす精神性、という趣旨の説明をしています(同巻)。

グループワークに戻します。「その案のほうが早いよ」が通らないとき、相手が非合理なのではありません。あなたが、相手の回収したいものを読み違えている。 ほぼ例外なくこれです。

この場面を人的資本経営の観点から読み解いた細田薫氏のコラムが、この記事の出発点になっています。

自分の物語が無いと、集中する先も決まらない

何を頑張ればいいのか決まらないまま、机の前で止まっている学生
あー、俺って何になりたいんだろう……。とりあえずノートに誰かの名前でも書いてみるか。……僕は新世界の神となる! これこそ挑戦的集中! FLOWだ!

最高のパフォーマンスが出ている状態を FLOW と呼びます。ここに入るには「自分だけの、少し難しい課題」が要る、というのが一般的な説明です。

ただし順番があります。物語が先で、集中は後です。

自分の物語を持っていない人は、そもそも「何に集中すべきか」を設定できません。難易度の調整以前に、どこへ向かって難しくするのかが決まっていないからです。

「何を頑張ればいいか分からない」の正体は、たいてい能力の問題ではありません。回収先が決まっていないだけです。

物語は、これから作るものだと思うと手が止まります。過去形で探すほうが早い。

  • これまでで、時間を忘れて手を動かしていたのはどんな作業だったか
  • 褒められて嬉しかったのは、何を褒められたときか
  • 他人がやっているのを見て、内心「それは自分がやりたかった」と思ったことは何か
  • 面倒なはずなのに、なぜか自分だけ苦にならない作業は何か

4つとも「自分がどういうときに主人公だと感じたか」を過去から拾う質問です。ここに共通点が出れば、それがあなたの物語の輪郭です。

その物語を何もないところから立てる人と、他人が立てた物語を分解して組み直す人では、価値の作り方そのものが違います。同じ『ブルーロック』を手がかりにした天才と秀才の分け方は秀才は天才になれない。だから天才を喰うにあります。

他人の物語を読むのは、利他ではなくエゴのため

それぞれ別の作業に没頭していて、結果的に噛み合っている2人
別に仲良くはない。ただ、互いのエゴがたまたま同じ方向を向いているだけだ

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。なお、この節の「利他ではなくエゴのため」という捉え方は、前掲の細田薫氏のコラムの見立てによります。

他人のゴールを読もうという話をすると、「気配りをしましょう」「相手を思いやりましょう」という話に聞こえます。違います。

他人が自分の物語を進められる状態になると、その人のパフォーマンスが上がります。結果として、自分の仕事がやりやすくなる。 成果物の質が上がり、自分の評価も上がる。

つまり、他人の物語を読むのは自分のためにやることです。

一見すると相手を利用しているように見えます。それでいい。利用されている側にとっても、確実にプラスだからです。 自分が本当に取りたかった役割が回ってきて、力を出せる。損をしている人がいません。

「利他」と言い換えてはいけない理由もここにあります。利他だと思ってやると、見返りが無いときに続きません。 「こんなに気を遣ったのに」が始まる。エゴのためだと分かっていれば、続きます。

ミオ

…それ、人付き合いとしてはかなり冷たくないですか?

全部計算でやってるみたいで。

冷たく聞こえますが、実際に相手に届くのは計算の動機ではなく、取りたかった役割が回ってきたという事実のほうです。善意で読み違えられるより、はるかにましだと思います。

権限がない立場で、どう立ち回るか

誰も座っていない席に、自分から座りにいく学生
これが、俺のゴールの方程式……

ここまでは、リーダーやマネージャー向けに語られることの多い話です。「メンバーが物語を開示し合える環境を作れ」といった提言になる。

学生にその権限はありません。 制度も文化も作れない。使えるのは3つです。

1. 自分の物語を先に開示する

「自分はこの授業で成績を取りたい」「正直、今回は最短で終わらせたい」を最初に言う。抵抗があると思いますが、開示されていないものは誰にも読めません。

読めないと何が起きるか。「この人はきっとこうしてほしいはずだ」という推測が発生し、それが外れて、両方が不幸になります。

2. 空いている位置を取る

役割が配られるのを待たない。4タイプを見分けたら、誰も取っていない位置が必ず見えます。

全員が成果型なら、終了条件を決める人がいない。全員が効率型なら、質を担保する人がいない。そこに立つ。 これが「自分の価値を作る」の実体です。役割ではなく、ポジションです。

3. 相手のゴールに翻訳して渡す

同じ依頼でも、相手が回収したいものに合わせて言い換える。内容は1ミリも変えません。

相手「議事録を取ってほしい」の言い換え
成果型「決まった根拠が残ってないと、最後に詰められたとき戻れないんだよね」
効率型「毎回思い出す時間が消えるから、トータルでは短くなるよ」
承認型「これがあると先生が進行を把握しやすいから、名前を出しておく」
安全型「言った言わないになるのが一番きついから、記録だけ残しておきたい」

それは就活で回収される

面接で話す学生と、身を乗り出して聞いている面接官
楽しすぎんだろ、面接!!!

ここまでの話が、そのまま効いてくる場面があります。

ガクチカが弱くなる原因は、経験が地味だからではありません。役割しか書いていないからです。

  • 役割:「サークルでリーダーを務め、チームをまとめました」
  • 物語:「メンバーの目的がばらばらだと気づき、全員分の目的を先に聞いて、役割の配り方を変えました」

前者は誰が書いても同じ文になります。後者は、あなたが何を見て、何を判断したかが入っている。面接官が知りたいのは肩書きではなく、状況の読み方です。

そして自己分析とは、結局のところ自分の物語を言語化する作業のことです。適職診断を受けることではありません。この記事の3番目の見出しでやったことが、そのまま自己分析です。

グループワークは、その練習を単位を取りながらできる場所だと考えてください。バイト先でも同じことが試せます。社会人になってからいきなり求められるより、いま失敗しておくほうが安い。

やってはいけない「主人公感」

一人だけ先に突き進んでしまい、他のメンバーが置き去りになっている場面
計画通り。……なお、後ろの3人の作業は止まっている

最後に、この考え方がいちばん壊れやすい方向を書いておきます。

主人公感は、独りよがりの免罪符ではありません。

他人の物語を読まない主人公感は、ただのわがままです。実際、さきほどの潔の失敗がそれでした。自分の物語だけを見て「これが最適だ」と言った結果、拒否されている。 主人公感を持つことと、他人の物語を読むことは、両方揃って初めて機能します。

具体的には、この3つが危険信号です。

  • 「これが自分のやり方だから」で締切や約束を落としている
  • 自分の物語に合わない作業を、他の人に押し付けている
  • 誰の役割も空いていないのに、無理に目立つ位置を取ろうとしている

判断の基準は一つです。自分の物語を進めることが、同時に他人の物語も進めているか。

進めていないなら、それは主人公感ではなく、ただ場を私物化しているだけです。全員が主役の座を取り合えばチームは崩れます。別々の物語が、同じ成功のところで交差したときにだけ、噛み合いは起こります。

リナ

気をつけてね。

「自分らしくやる」って言葉、便利すぎて、ただ迷惑かけてる人の言い訳にもなるから。

まとめ:価値は、空いている位置に立つと生まれる

この記事の要点だけ、もう一度並べます。

論点結論
なぜ評価されないのか作業量の問題ではない。同じ卓の全員がゴールを共有していない
相手のゴールの見分け方宣言ではなく選択を見る。初回30分の役割決めにすべて出る
正しい提案が拒否される理由提案が誤っているのではなく、相手の回収したいものを読み違えている
主人公感とは何か自分の物語を信じて突き動かす精神性。物語が先で、集中は後
なぜ他人の物語を読むのか利他ではなくエゴのため。相手が力を出すほど自分の仕事が楽になる
権限が無い立場でできること自分の物語を先に開示する/空いている位置を取る/相手のゴールに翻訳して渡す
就活でどう効くか役割ではなく「状況をどう読んだか」を書く。それが自己分析そのもの
危険信号自分の物語だけが進み、他人の物語が止まっているとき

自分の価値は、与えられた役割をこなすことでは生まれません。 全員のゴールがばらばらだと気づいた人だけが、まだ誰も立っていない位置を見つけられます。そこに立つことが、そのままあなたの価値になります。

グループワークは学期に何度も回ってきます。次の1回を、練習台として使ってください。バイト先でも同じことが試せるので、シフトの決め方と合わせて、自分の時間をどこに置くかから考えてみてください。

よくある質問

ブルーロックを読んでいなくても理解できますか

できます。触れるのは第23巻の一場面だけで、前提となる設定は本文の中で説明しています。作品を知らない状態で読んでも意味が通るように書いてあります。

グループワークではリーダーをやったほうが評価されますか

役職そのものは評価されません。評価されるのは、その場に何が足りないかを読んで、空いている位置を自分で取ったという事実です。リーダーはその選択肢の一つにすぎず、記録係でも調整役でも同じことが起こせます。

相手のゴールは、直接聞いて確かめたほうがいいですか

初対面の相手に「目的は何ですか」と聞いても、建前しか返ってきません。宣言ではなく選択を見てください。役割を決める場面で誰が何を取りに行ったかに、その人が回収したいものが出ます。

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