大教室で、前回と同じあたりの席に座った学生の隣に、見覚えのある学生が座ろうとしている

友達づくりの基礎の基礎

「何を話せばいいか分からない」と思っている人の多くは、話す前の段階で止まっています。友達ができるかどうかを決めているのは会話の中身ではなく、その人ともう一度会う予定があるかどうかです。

大学で友達ができないのは、性格ではなく仕組みが変わったから

入学して1か月、まだ誰とも連絡先を交換していない。学食で一人になる。この状態を「自分のコミュニケーション能力が低いから」と考える人は多いのですが、原因はもっと単純なところにあります。

高校まで自動的に起きていたことが、大学では起きなくなっただけです。

高校大学
教室毎日同じ授業ごとに変わる
ほぼ固定毎回自由
顔ぶれ1年間ずっと同じ40人科目ごとに全部違う
同じ人に会う回数年に200回以上履修が重ならなければ0回
友達のでき方放っておいてもできる条件を作らないと発生しない

高校の友達は、意識して作ったというより、同じ部屋に毎日いた結果としてできたはずです。大学にはその装置がありません。隣に座った人と話が弾んでも、来週その人は別の教室にいます。

つまり、必要なのは会話のスキルを上げることではなく、同じ人ともう一度会う条件を自分で用意することです。

リナ

毎年いるんだよね、「友達できない」って言いながら、大教室の講義しか取ってない子。

それ、誰とも2回目が起きない時間割だから。

友達になるかどうかは、話の面白さより「会った回数」で決まる

心理学に単純接触効果(ザイアンス効果)という有名な知見があります。人は、繰り返し接した相手や物に対して好意的な評価をしやすくなる、というものです。特別な会話をしなくても、単に何度も顔を合わせているだけで、相手の中での「知らない人」という枠から外れていきます。

ここから逆算すると、新学期にやりがちな失敗が見えてきます。

  • 新歓を回って、20人と1回ずつ話す
  • その場は盛り上がるが、翌週には誰とも会わない
  • 名前も顔も互いに残らないまま、5月になる

接触の総量は「人数 × 回数」で、多くの人は人数だけを増やしています。 20人と1回ずつより、5人と10回のほうが友達に近づきます。

1回ずつ大勢に会う場合と、同じ数人に毎週会う場合の、学期を通した接触の違いを示した図

だから「何を話せばいいか分からない」は、実は解くべき問題ではありません。1回の会話の質を上げようとするより、2回目・3回目が起きる場所に身を置くほうが効きます。

「また会う」場所を、先に確保する

では、どこにいれば2回目が起きるのか。メンバーが固定されていて、週に1回以上集まる場所です。大学の中にあるものを、再会の起きやすさで並べると次のようになります。

場所同じ顔ぶれで会う頻度話しかける口実難点
語学・実験・演習・少人数の必修毎週。学期中ずっと課題・出欠・グループ分けが自動で発生する自分で選べないことがある
サークル・部活週1〜2回活動そのものが共通の目的合わないと居づらい
学祭実行委員・学部の委員期間限定で高頻度役割があるので話す必要が生じる忙しい時期が重なる
学内バイト(図書館・TA補助など)シフト次第業務の引き継ぎ採用枠が少ない
大人数の講義ほぼ0ほぼ無い毎回席も顔ぶれも変わる

一番下が重要です。大教室の講義しか取っていない学期は、構造的に誰とも友達になりません。 悪いのは自分ではなく時間割です。

そのうえで、大人数の講義でも再会を作る方法が1つあります。毎回、同じあたりの席に座ることです。 同じ列の同じ側に座り続けると、同じことをしている人が数人います。彼らとは自動的に週1回、同じ空間に居合わせることになります。

  • 今学期の時間割を見て、同じ顔ぶれで週1回以上集まる科目があるか数える
  • 0だったら、来学期の履修で少人数の科目を1つ入れる(語学・演習・実習)
  • 大人数の講義は、毎回だいたい同じ席に座ると決める
  • 授業以外に、週1回顔を出す場所を1つ持つ(サークル・委員会・学内バイト)
  • 1回で決めようとせず、同じ場所に4回行くまでは判断しない

最後の項目が効きます。1回目で「合わなかった」と判断すると、どの場所も1回で終わります。判断を4回目まで保留すると決めておくだけで、続く場所が急に増えます。

最初の一言は、自己紹介ではなく「いま共有している事実」から

場所を確保したら、次は最初の一言です。ここで多くの人が、自己紹介・出身・趣味といった「自分の情報」から入ろうとして固まります。

話しかけやすいのは、自分の話でも相手の話でもなく、いま二人が同時に見ているもののほうです。

場面言うこと
授業の前「ここ、席って決まってるんですかね」
課題が出た直後「これ、提出って来週でしたっけ」
レジュメを配っている「それ、後ろから回ってきました?」
教室移動「次って◯◯棟でしたよね」
グループワーク「担当、どこから決めます?」
出席確認の後「これ、何回休めるやつでしたっけ」

共通しているのは3つです。質問の形になっていること。相手が1秒で答えられること。答えを自分が知っていても構わないこと。

「レジュメを持っていない」「提出日を覚えていない」という、少し困っている側から入るのがコツです。人は、頼られた側になると答えやすくなります。逆に、こちらが情報を提供する形(「これ来週提出だよ」)は、会話が1往復で終わります。

授業のプリントを指しながら、隣の席の学生に短く質問している学生

そして、1回目はそれで終わってよいという点が大事です。名前を聞く必要も、連絡先を聞く必要もありません。次に同じ席で会ったときに「あ、この前の」から始まれば、その時点で成功しています。

ハル

それ聞いて、「はい」で終わったらどうするんだ。

気まずくない?

リナ

終わっていいの。

1回で友達にしようとするから重くなるんだって。

来週も同じ席にいれば、それで2回目が勝手に来るから。

連絡先は、用事とセットで交換する

連絡先の交換は、「仲良くなったから」ではなく「渡すものがあるから」やるほうが自然に進みます。

  • 休んだ回のレジュメを写真で送る
  • 課題の提出先URLを共有する
  • グループワークの分担を決めるために作る
  • 次の集まりの連絡のためにグループへ入れてもらう

この形なら、断られにくいうえに、交換した直後に送る1通目が最初から手元にあります。

交換したのに一度も送らないまま終わる、というのが一番よくある失敗です。連絡先そのものは関係ではありません。1通目を送って、相手から返ってきて初めて、次に会ったときに話す材料ができます。

4月を逃しても入り直せる。時期ごとの経路

「新歓の時期を逃した」「気づいたら夏休みだった」という状態から読んでいる人向けに、時期ごとの入口を書きます。大学は年に何度も顔ぶれが入れ替わるので、入り直せる地点がいくつもあります。

時期使える入口
5〜7月(前期の途中)大人数の講義で座る位置を固定する。学祭実行委員などの募集が出はじめる
夏休み短期の合宿・イベント・集中講義。人数が少なく話す時間が長い
9〜10月(後期の頭)履修が総入れ替えになる最大の機会。 少人数の科目を意図的に入れる
2年以降ゼミ・研究室・実習。同じ数人と数年間会い続ける構造が自動で手に入る
いつでもサークルに「今からでも入れますか」と聞く。新歓期以外の入部は普通にある

とくに後期の履修は、多くの人が見落としている再チャレンジの機会です。春に決まった人間関係が固定されていると思い込みがちですが、10月にはまた全員が知らない教室に座り直します。

ぼっちで本当に困るのは、寂しさより情報

友達がいない状態で実際に不便なのは、感情面よりも情報面です。ただし、その情報のほとんどは、友達以外の経路で取れます。

困ること友達に頼らない取り方
休講・教室変更大学の公式ポータル・掲示。通知をスマホに集約する
提出期限・課題の詳細シラバスとLMS(学習管理システム)の原文。口頭より正確
履修の相談教務課の窓口。制度上の判断はここが最終的な正
授業内容が分からない教員のオフィスアワー、TA、学習支援センター
レジュメの取りこぼし教員に直接申し出る。次回の授業前に言う

教務課・佐藤さん

窓口に来ていただければ、その場で確認できます。

友人から聞いた情報より、こちらのほうが正確です。

情報を集約する仕組みは大学の時間割・出席管理アプリはどれを使う?に、履修の組み方は履修登録で失敗しない時間割の組み方にまとめています。

順番として大事なのは、情報のために友達を作りに行かないことです。過去問や課題のために近づくと、目的が済んだ時点で関係のほうが終わります。情報は制度から取り、友達は回数から作る。この2つを分けておくと、どちらも安定します。

全員と仲良くなろうとしない

最後に、広げすぎることの副作用にも触れておきます。

友達を作る話をすると「たくさん作らないといけない」と受け取られがちですが、必要な数は多くありません。一緒に授業を受けられる相手が2人いれば、大学生活はかなり回ります。

むしろ気をつけたいのは、居場所が1か所に集中することです。サークル1つに人間関係の全部を預けると、そこで何かが起きたときに大学生活ごと止まります。この構造についてはサークルクラッシュはなぜ起きる?で詳しく書いています。

深さより、数を2にする。 授業で会う人、サークルで会う人、バイトで会う人。別々の場所に薄くいるほうが、1か所に濃くいるより崩れにくくなります。

まとめ:友達は性格ではなく、再会の回数で決まる

「友達の作り方」を探している人が本当に必要としているのは、話し方のテクニックではなく、同じ人ともう一度会う条件です。高校ではそれが自動で供給されていて、大学では供給されない。差はそこにあります。

論点結論
できない理由性格ではなく、同じ人と繰り返し会う仕組みが無くなったこと
効くこと会話の質より接触の回数。20人と1回より5人と10回
場所の選び方メンバーが固定され、週1回以上集まる場所(少人数科目・サークル・委員会)
大人数の講義毎回同じあたりの席に座るだけで再会が生まれる
最初の一言自己紹介ではなく、いま一緒に見ているものへの短い質問
連絡先仲良くなってからではなく、渡すものがあるときに交換する
出遅れたとき後期の履修が最大の再挑戦。ゼミ・実習・学祭も入口になる
目標の数全員ではなく2人。深さより居場所の数

話しかける勇気より先に、来週も同じ場所にいることのほうが効きます。 今学期の時間割を見て、同じ顔ぶれと週1回以上会う予定が1つも無いなら、直すのは自分の性格ではなく履修のほうです。

人間関係の距離の取り方についてはサークルクラッシュはなぜ起きる?、合わない場所から抜けるときはサークルを辞めたいときも参考にしてください。

よくある質問

大学で友達ができないのは普通ですか?

珍しくありません。高校までは同じ教室に毎日同じ顔ぶれが集まるので、何もしなくても同じ人と何度も会えました。大学は履修が一人ずつ違い、教室も毎回変わるため、その繰り返しが自動では起きません。できないのは性格ではなく、再会が発生しない条件のほうが原因であることが多いです。

大学で友達を作るのに一番効くのは何ですか?

同じ人と繰り返し会える場所に、自分から入っておくことです。少人数の語学・実験・演習、サークル、委員会など、メンバーが固定されていて週に1回以上集まるものが向いています。大人数の講義しか取っていない学期は、誰とも2回目が起きないまま終わります。

最初の一言は何と言えばいいですか?

自己紹介や趣味の話ではなく、その場で一緒に見ている事実から入ると続きます。「これ来週提出でしたっけ」「ここ、席決まってるんですかね」のように、相手が1秒で答えられる質問にするのがコツです。答えを知っていても聞いて構いません。

4月を逃しました。もう友達はできませんか?

できます。履修が入れ替わる後期、学祭などの期間限定の活動、2年以降のゼミや実習は、いずれも新しい顔ぶれと繰り返し会う機会が生まれる時期です。サークルも新歓期以外に入る人は普通にいるので、「今からでも入れますか」と聞くところから始められます。

友達がいないと単位は取れませんか?

取れます。休講や教室変更は大学の公式な連絡、履修の相談は教務課、授業内容の質問は教員のオフィスアワーで足ります。情報のために友達を作ろうとすると関係のほうが先に続かなくなるので、情報は制度で取り、友達は別に作るほうが結果的にうまくいきます。

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