
賃貸の入居初日にやらないと後悔すること|退去費用・害虫・設備トラブル対策
入居初日にやることは荷ほどきではありません。まだ何も置いていない部屋は、この先2年か4年で一度しか撮れない状態です。ここで1時間使うかどうかで、退去時に数万円払うかが決まります。
なぜ、荷ほどきより先なのか
入居初日にやることを1つだけ選ぶなら、部屋を記録することです。
理由は、この作業が入居初日にしかできないからです。家具と段ボールが入った瞬間、壁の下半分と床の大部分は見えなくなります。そして次にこの部屋が空になるのは、退去の日です。
退去のとき、原状回復の費用をめぐって何が起きるかというと、「この傷はいつからあったのか」という話になります。そこで貸主側が持っているのは前の入居者の退去時の記録で、自分が持っているのは記憶だけ、という状態になりがちです。

母
部屋の写真、撮っておきなさいよ。
うちは前に一度それで揉めたことがあるから。
国民生活センターには、賃貸住宅の原状回復に関する相談が毎年1万3千件を超えて寄せられています(2023年13,273件、2024年13,312件、2025年14,711件)。同センターは消費者へのアドバイスとして、入居時に住宅の状態を確認し、写真撮影などで記録しておくことを挙げています。
つまりこれは、揉めた人が特別に運が悪かったという話ではありません。毎年1万件以上起きていることに、1時間で保険をかけるという話です。
手順1:水を流す(最初にやる)
部屋に入ったら、最初にやるのは撮影ではなく排水の確認です。理由は、問題が見つかったときに管理会社へ連絡する時間が要るからで、夕方に気づくと翌日以降になります。
- キッチン・洗面所・浴室・洗濯機置き場の排水口すべてに水を流す
- 流したあと、排水口の下(シンク下の収納の中など)を覗いて水漏れが無いか見る
- トイレを流して、給水が止まるまで待つ
- 浴室の排水が引かずに溜まらないか、少し多めに流して確認する
- しばらく人が住んでいなかった部屋は、排水トラップの水が蒸発していることがあるので、各排水口に多めに水を流しておく
最後の項目は害虫対策でもあります。排水口の下にはU字型に水が溜まる構造(トラップ)があり、この水が下水側からの臭いと虫の通り道を塞いでいます。空室期間が長いと蒸発して塞がりが無くなっているので、水を流して封をし直す必要があります。
手順2:設備を1つずつ動かす
次に、備え付けの設備を全部動かします。見るだけでは分かりません。
- エアコン:冷房と暖房の両方を数分ずつ運転し、風が出るか・異音や異臭が無いかを見る
- 給湯器:台所と浴室の両方でお湯を出し、設定温度まで上がるか確認する
- 換気扇:浴室・トイレ・キッチンそれぞれを回して、音と風量を見る
- インターホン:外の子機から鳴らして、室内で応答できるか確認する
- コンセント:全箇所に何か挿して通電を確認する(スマホの充電器で足りる)
- 照明:備え付けの器具が点くか。無い部屋は自分で買う必要があるので、この時点で分かると助かる
- 鍵:玄関と、窓・ベランダの鍵が全部かかるか
国民生活センターも、傷や汚れだけでなく備え付けのエアコンなどが正常に動くかを入居時に確認するよう案内しています。動かないものを入居後に見つけても、それが元からなのかは自分では証明できません。

教務課・佐藤さん
教務課ですが、これは大学の話ではないので一般論として。
学生さんが後から「壊れていました」と言っても、記録が無ければ扱いようがないのはどの組織でも同じです。
手順3:記録を撮る(家具を入れる前に)
ここでようやく撮影です。家具と段ボールを入れる前という条件が最重要なので、搬入より前に済ませてください。
撮り方
写真だけでなく、動画も撮ってください。 写真は「その傷だけを撮った画像」になりがちで、部屋のどこなのかが後から分からなくなります。動画で部屋を一周しておくと、位置関係ごと残ります。
- 各部屋を、入口からぐるりと一周する動画(無言でいいが、「〇〇の壁」と口に出すと後で探しやすい)
- 壁は4面すべて。特に腰から下と、家具を置く予定の面
- 床:全体を写したあと、傷・へこみ・変色があるところは寄りで1枚
- 建具:ドア・引き戸・襖・網戸の破れ・クローゼットの扉
- 水回り:シンク、洗面台、浴槽、便器の汚れとひび
- サッシと窓ガラス、ゴムパッキンのカビ
- ベランダの床と手すり
- 備え付け設備の型番が写るように(エアコン・給湯器のリモコン含む)
日付が残る形にしてください。 スマートフォンで撮れば撮影日時はデータに記録されますが、写真を送ったり加工したりすると消えることがあります。撮った当日にクラウドへバックアップしておくのが一番確実です。
傷を見つけたら、自分で直さない
既存の傷を見つけたときにやることは、記録して管理会社に伝えることだけです。
多くの物件では入居時に「室内確認チェックシート」が渡され、1〜2週間以内の返送を求められます。これを出さないと「入居時は問題無しだった」という扱いになります。 撮影した写真とセットで、見つけたものを全部書いて返してください。
手順4:害虫の入口を塞ぐ
家具を置く前が、最も作業しやすいタイミングです。
侵入経路になりやすいのは、排水口・エアコンのドレンホース・換気口・玄関やサッシの隙間です。手順1で排水トラップに水を張ったので、残りをやります。
エアコンのドレンホース
エアコンの室外機側から地面へ伸びている細いホースが、そのまま室内につながる管になっています。ダイキンも公式に、小さな虫が外から部屋に侵入してくる場合は「防虫ドレンキャップ」をドレンホースの先に取り付けることで害虫の侵入を防ぐと案内しています。
ここで注意してほしいのは、塞いではいけないという点です。
ドレンホースはエアコンが冷房運転中に発生させる水を外へ捨てるための管です。目の細かい網を巻く、テープで留めるといった方法は、虫は防げても水の出口を狭めます。詰まれば水は室内側に戻り、エアコンから水が垂れます。排水を妨げない市販の防虫ドレンキャップを使うのが基本形だと考えてください。

ユウタ
俺、去年ストッキング巻いとけばいいって聞いてやったんだけど、夏にエアコンから水ボタボタ垂れてきて最悪だった。

リナ
それ、水の出口を自分で塞いだだけだからね……。
虫を止めるのと水を止めるのは違うんだって。
そのほかの隙間
- 洗濯機の排水口まわりの隙間(防臭キャップが外れていないか見る)
- キッチンのシンク下、配管が壁や床を貫通している部分の隙間
- 換気口・通気口にフィルターやカバーが付いているか
- 玄関ドアの下、サッシの戸車部分の隙間
配管まわりの隙間は、隙間埋め用のパテやテープで塞げます。ただしこれも原状回復の対象になり得る加工なので、剥がせるものを選んでください。 迷ったら、そこも管理会社に聞くのが早いです。
手順5:家具を置く前に、床を守る
ここまで終わってから搬入です。置く前にやることが2つあります。
1つ目は、家具の脚にカバーやフェルトを貼ることです。 床のへこみと擦り傷は、退去時に指摘されやすい箇所です。国土交通省のガイドラインでも、椅子や机の脚のカバー、家具の下のマットは、傷を防ぐための実務的な工夫として紹介されています。
2つ目は、置き場所を決めてから運び入れることです。 一度置いてから動かすと、その移動で床が傷みます。手順3で撮った動画があるので、コンセントとエアコンの位置は分かっているはずです。
- ベッド・机・椅子・棚の脚にフェルトを貼る
- 冷蔵庫と洗濯機の下にマットを敷く(振動と水滴の両方に効く)
- 湿気がこもる面(外壁側の壁)から家具を数センチ離して置く
- カーテンレールの長さを測ってからカーテンを買う(サイズ違いで買い直すのが定番の失敗)
手順6:通信を確認する
最後に、生活に直結するものを2つ。
インターネットです。 物件に光回線が引き込まれているか、無料インターネット付きか、自分で契約が要るかで、使えるまでの日数がまったく違います。自分で引く場合、工事まで数週間かかることがあります。入居初日は、その日数が判明する日だと思ってください。
授業資料の閲覧やオンライン授業、レポートの提出が全部ここに乗るので、後期の履修が始まる前に片づいている必要があります。
もうひとつは携帯の電波です。 部屋の中、特に窓から遠い場所で電波が入るか確認してください。鉄筋の建物では部屋によって差が出ます。
まとめ:入居初日にやることの全体像
順番だけまとめておきます。上から順にやってください。
| 順番 | やること | なぜその順番か |
|---|---|---|
| 1 | 全排水口に水を流す・水漏れ確認 | 不具合があった場合に連絡する時間が要る |
| 2 | 設備を1つずつ動かす | 同上。ガス開栓の立ち会いもここ |
| 3 | 写真と動画で記録・傷を管理会社へ連絡 | 家具を入れると撮れなくなる |
| 4 | 害虫の侵入経路を塞ぐ | 家具を置く前が作業しやすい |
| 5 | 脚カバーを貼ってから家具を搬入 | 置いてからでは貼れない |
| 6 | 回線と電波の確認 | 工事が要る場合、日数が判明する |
この6つで、だいたい1時間です。
引っ越し当日は疲れているので飛ばしたくなりますが、飛ばした場合に返ってくるのは2年後か4年後、金額の形です。実際に退去時に何が起きるかは、賃貸の退去費用、高すぎない?で扱っています。入居初日にやる作業は、そのときに使う証拠を作る作業です。

ハル
つまり今日の1時間が、卒業するときの数万円ってことか。……それ先に言ってほしかった。
初期費用の抑え方や、何をいつ買うかの分け方は大学生の一人暮らし持ち物チェックリストにまとめています。あわせて読むと、入居初日にやることと後回しでいいことが切り分けられます。
よくある質問
入居時の写真は本当に必要ですか?
必要です。退去時に請求された傷が、入居前から有ったのか自分が付けたのかを示す材料が他にありません。国民生活センターも、入居時に住宅の状態を確認し写真撮影などで記録しておくことを消費者へのアドバイスとして挙げています。撮り直しはできないので、家具を入れる前に済ませてください。
入居時に傷を見つけたらどうすればいいですか?
写真を撮ったうえで、管理会社または大家に早めに連絡し、記録として残してください。多くの物件では入居時のチェックシートが渡されるので、そこに書いて返送するのが確実です。自分で修繕しようとしないでください。借りている部屋は貸主の資産なので、無断で手を入れるとかえってトラブルになります。
エアコンのドレンホースは塞いでしまっていいですか?
塞がないでください。ドレンホースはエアコンが出す水を排出するための管なので、排水を妨げる加工をすると室内側から水が漏れる原因になります。虫の侵入が心配な場合は、市販の防虫ドレンキャップのように排水を通しながら虫を防ぐ製品を使ってください。
入居初日にガス・水道・電気は使えますか?
電気と水道は開栓の手続きが済んでいれば当日から使えることが多いですが、ガスは立ち会いによる開栓が原則です。入居日に予約が取れていないと、その日はお湯が出ません。引っ越し当日は予約が集中するため、日程が決まった時点で連絡しておいてください。
何時間くらいかかりますか?
記録と動作確認だけなら1時間ほどです。家具や段ボールを入れてしまうと壁や床が隠れて撮影できなくなるため、荷物を運び込む前に済ませるのが前提になります。搬入業者が来る時間より早く部屋に入っておくと確実です。



